ごあいさつ話まとめ 2024.1〜6

ゾロナミ

1月

 はねた毛先を指ですくっては、軽く巻きつけて、くるりと離す。切りすぎた髪をからかうようなその指先は、どこか嬉しそうでもあった。
「懐かしいな」
「そ?」
 伸ばし続けた髪をバッサリと、肩につくかつかないかの長さに切ったのに特別な理由はなかった。出会った頃と同じ髪型。襟足を抜けていく冷たい風が、気持ちをスッと新たなものに変えていく。
「似合ってる」
「私だもん」
「そうだな」
 笑いながら肯定して、俺は好き、とこぼした声は穏やかだ。照れもせず、そんなことをさらりと言うゾロの温度感が好ましい。裏のない真っ直ぐな気持ちが、心の内をほんのりとあたたかくする。
 この距離感に名前は付けたくない。
 ただの友だちと呼ぶには気を許していて、けれど互いを縛る約束をした恋仲ではない。しようと思えばキスだって、もしかしたらセックスさえできてしまうかもしれない。けれどそうして相手に踏み込むことはしないでいるこの距離が、今はとても心地良いから。
「私も好き」
 一瞬、確かに絡んだ視線はすぐに解けた。ゾロの指は私の髪を撫で、その心地よさに目を閉じる。今がいつまでも続けば良いと、願わずにはいられなかった。

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